2010年8月31日

酒樽に適していない杉の木

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吉野杉は酒樽(たる)の材料としては最適なのですけれど、
なにしろ植物。自然のものですから、品質が安定している訳ではありません。
画像のものは「あて」と呼ばれている、杉と思われない位に大変硬度の高い部位です。
「あて字」で「陽疾」と書きます。稀に「档て」とも言いますが、漆器の材料になる「档(あて)」の木と混同し易いので、使わなくなり、「反木」と書いて「あて」と読みました。
硬いけれど実際の強度は普通の杉より劣ります。
建築材に使う場合でも、まことに厄介な代物で、普通は使いません。


杉が生えていた地質によって、こういう変化を起こしてしまいます。
山の斜面など、環境の悪い場所で育った木が太陽に向って垂直に成長しようとする時に、
自身を守るために硬化していきます。
重力に逆らって出来た、材木の肩こりの様なものです。

木樽(たる)は吉野杉の持つ柔らかさをを利用して酒が洩れないものを作る訳ですから、
このような硬い材料は酒樽には適しておりません。
原木を加工する過程で必ず廃棄するので、市場には出て来ないのですが、
一年に一枚か二枚は誤って混入することがあります。
幸い、この場合は蓋(ふた)でしたので、そのまま使用しました。
写真で三枚を接いでいる、真ん中が陽疾(あて)です。

樽太鼓に使えば硬い楽器が出来て丁度よいのですが、材料の確保が出来ません。

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