漬物樽や味噌樽には、木製の樽が発酵に最適であるという事はすこしずつ理解されてきました。しかし、長期保存には板目の樽が一番適しているということを、皆さん忘れてしまっておられるようです。
柾目は短期間の使用を繰り返す風呂桶や寿司半切、お櫃(ひつ)などに適しています。
柾目の杉を漬物樽に用いますと、必要以上に柔らかい春目の細胞から水分が過剰に排出し、漬物樽には適しません。
樽は板目、桶は柾目であるという事が基本ですが、長期保存用のような場合は例外もあります。
例えば一昨日、紹介した大桶がそうです。桶という呼び名ですが厚い板目材を用いております。
漬物には板目の漬物樽(たる)を お使いいただくのが理に適っているという訳です。
柾目の桶
2007年7月22日
2007年7月21日
酒樽屋の「お八つ」其の九
あわじ屋の看板娘
力仕事の酒樽屋では、休憩時間によく甘い物を「お八つ」にします。
江戸、明治の徒弟制度の時代には考えられなかったことですが・・・・・
樽屋は町内にある和菓子屋へ走ります。
ここで阪神間の一部の地域限定かと思われる和菓子「しがらき餅」が買えるからです。
神戸市内でも、樽屋が知っている限り、ここを含め二軒しか売っていません。
夏限定のお菓子です。
写真左下のように、そのままでは「カットおにぎり」です。「おはぎ」の中身のような餅米の半つきです。きな粉をたっぷりかけて、ようやく「お菓子」になります。
本来はソーセージのような円筒形になっていて、糸で切って食べたものです。
昔は夏になると、リヤカーを牽いたおぢさんが「わらび餅」と一緒に売りにやって来ました。
さお竹屋や金魚売りが町から消えて行き、日本の風情の変化に樽屋も寂しい思いをしております。
あわじ屋
阪神電車大石駅下車すぐ南 神戸市灘区船寺通1-3-3
電話 078-861-5447
酒樽屋の近くにある大桶
沢の鶴資料館にて
「たるや竹十」の前にある資料館で展示されている大桶です。
��0石桶ともいい、酒造関連では一番大きい桶です。
何人もの人間が入るほど大きい。
直径が2m30cm、深さ1m95cm
容量6336ℓ、即ち一升瓶で3520本分。
先日紹介した「つけもの」という保育社の文庫本の表紙になった物はこれでしょう。
今ではこれらの杉製大桶は大変貴重です。
昭和30年代半ばから、40年代にかけて、全国の日本酒の蔵元は、これらの大桶をどんどん廃棄し、
琺瑯(ほうろう)やステンレス桶に替えていきました。
そして、中古の大桶は醤油業者、味噌業者あるいは漬物業者が使っていました。
最近になって、その価値に気がついた蔵元は大桶を探していますが、もう手遅れかもしれません。
新品を作るとなると現在では数百万円程かかってしまいます。
箍(たが)に使う竹も酒樽より長い物が必要なので、竹の時期の良い冬に準備しておく必要があります。
大桶製作は三人一組でないと出来ないので、少なくなっていく職人の事を考えれば新しくあつらえるのも、増々困難になって来ています。
最近、桶の保存会も出来、再評価されてきました。
名人、故常峰巌師匠の工房前での桶輪替風景
「たるや竹十」でも、明治期には大桶を作っていたものです。
「たるや竹十」の前にある資料館で展示されている大桶です。
��0石桶ともいい、酒造関連では一番大きい桶です。
何人もの人間が入るほど大きい。
直径が2m30cm、深さ1m95cm
容量6336ℓ、即ち一升瓶で3520本分。
先日紹介した「つけもの」という保育社の文庫本の表紙になった物はこれでしょう。
今ではこれらの杉製大桶は大変貴重です。
昭和30年代半ばから、40年代にかけて、全国の日本酒の蔵元は、これらの大桶をどんどん廃棄し、
琺瑯(ほうろう)やステンレス桶に替えていきました。
そして、中古の大桶は醤油業者、味噌業者あるいは漬物業者が使っていました。
最近になって、その価値に気がついた蔵元は大桶を探していますが、もう手遅れかもしれません。
新品を作るとなると現在では数百万円程かかってしまいます。
箍(たが)に使う竹も酒樽より長い物が必要なので、竹の時期の良い冬に準備しておく必要があります。
大桶製作は三人一組でないと出来ないので、少なくなっていく職人の事を考えれば新しくあつらえるのも、増々困難になって来ています。
最近、桶の保存会も出来、再評価されてきました。
名人、故常峰巌師匠の工房前での桶輪替風景
「たるや竹十」でも、明治期には大桶を作っていたものです。
2007年7月19日
吉野杉の酒樽と杉箸
酒樽に使う最適の材料として開発されたものが吉野杉です。杉製品として酒樽と杉箸は助け合って発展してきました。
現在では吉野杉といえば高級建築材だと思われる率の方が高くなっていますが。
酒樽、杉箸のどちらに使っても辺材は生まれます。
この辺材の白い部分を捨てるのは勿体ない、何かに利用できないかと考えた末、出来たのが奈良県吉野郡特産の杉箸です。
これらは、山の手入れによって出た間伐材や、焼却せざるを得ない不要な部分を利用しているのであって、決して、過剰な伐採によるものではありません。
一時、エコロジーという名のもと「割り箸は無駄」と言われ、目の敵にされて、美しい箸を作っていた吉野地方の多くの箸業者が廃業に追い込まれました。
むしろ、問題なのは現在、日本向けに行なわれている東南アジアや中国の大規模な森林伐採です。
これは明らかに環境破壊であって、現地では事実多くの自然災害を引き起こして問題になっています。
今頃になって事態を重く見た中国政府は来年から日本への輸出を禁止するのだそうです。
今、日本の市場に出回っている割り箸の多くがこれらの国からの輸入製品です。
これらの産業によって、現地の人々の生活が潤っている訳ですが、台風などの災害の際に被害者になるのはいつも現場で働いている貧しい人々です。
しかも、神経質なほど清潔好きである日本人向けに雑木を漂白までしています。
食堂の割り箸が異常に白く、奇妙な味がするのは現地での薬品処理によるものなのです。
食べ物を口に橋渡しする物が「箸」です。最も重要な食器です。
一度、吉野の杉箸を使ってみて下さい。食べ物の味が全く違うことを理解してもらえると思います。
吉野杉の割り箸は決して特別な物ではありません。一膳5円位から販売しています。
上の写真、上から「天削」、次が高級品の「利休箸」、一番下が我々が日頃よく目にする輸入品です。
明日のテレビ番組で「箸」はどんな風に紹介されるのか不安ながら楽しみです。
多分、田中淳夫氏著『割り箸はもったいない?』(ちくま新書)をヒントにするんじゃないかと樽屋は思っているのですが・・・
2007年7月18日
樽屋の酒樽が写真だけテレビに出る
2007年7月17日
なぜ漬物樽(つけものたる)にビニールを?
これは昭和53年に保育社から刊行されたカラーブックス。人気だったシリーズの一冊です。
この表紙の写真を見た時、酒樽屋は愕然としました。
恐らく、どこかの酒蔵から入手した大桶でしょうが、ビニールで覆われています。
たいへん、気になるのが大桶に敷かれた、このビニールです。
吉野杉の大桶は呼吸しています。木製漬物樽もしかりです。
ビニールを敷かれると窒息します。
これでは、折角貴重な大桶を使ってもプラスチック容器に漬け込んでいるのと同じです。
プラスチック樽は呼吸しません。
日本のように湿気の変化の多い地域では四季の温度湿度の変化に合わせて木樽が動き、
天然乳酸菌の発酵に最適の調整がおのずと成されます。
木樽という自然素材ならではの環境変化への適応作用です。
昭和30年代に石油製品が普及し、老舗の漬物屋さんでもビニール袋を木製の
漬物樽に使うようになりました。樽屋にとっては考えられない程、不思議な行為です。
何故、折角の木製漬物樽にビニールを敷く理由を機会があれば漬物屋さんたちに訊いてみたいと思っています。
是非、漬物樽はビニール等を敷かないで使って頂きたいと樽屋は常々願っています。
ФФ写真のカラーブックスは版元倒産のため現時点では絶版・入手不可。現在の保育社は再建された別会社。ここではこの「つけもの」のようなマイナーな出版物の再版は困難。
2007年7月16日
酒樽屋 四十年振りに醤油樽を作る(再録)
普段は酒樽を作っておりますが、久方ぶりに醤油樽を作りました。
輸送用としての醤油樽は昭和30年代に完全に廃止され、一升瓶にとってかわり、更に今では殆どペットボトル入りになってしまいました。
この木樽は某醤油屋さんの店頭ディスプレイ用なので形だけで良かったのですが、職人根性が出てしまい洩れないように作ってしまいました。
醤油樽は写真のように黒い杉で作ります。
黒い木樽の方が丈夫なので、長く熟成させる醤油には適しています。
かつて醤油の産地、千葉県野田では灘製酒樽の「一空樽(いちあきだる)」と我々が呼ぶ中古樽、あるいは秋田杉の樽を使っていました。
和歌山では灘に出せない二級品の樽を、又、龍野(たつの)では、うすくち醤油用なのに最もアクの強い秋田杉の樽を使用。
唯一、小豆島だけは、灘五郷の酒樽に使用した残りの吉野杉製木製樽を贅沢に使っていたのです。
昨年、兵庫県たつの市が「うすくち醤油造りと匠の技の伝承記録」というDVDを製作しました。
醤油屋、酒屋、樽屋数軒が協力して出来たものですが、「たるや竹十」も最後の方に数秒間登場します。
昨春2時間余りかかって撮影したものです。
樽のつくり方がよく分かります。
��VDが手に入らない方は、ここでも容易に見る事が出来るようになったので、再録します。
うすくち醤油伝承保存会製作
輸送用としての醤油樽は昭和30年代に完全に廃止され、一升瓶にとってかわり、更に今では殆どペットボトル入りになってしまいました。
この木樽は某醤油屋さんの店頭ディスプレイ用なので形だけで良かったのですが、職人根性が出てしまい洩れないように作ってしまいました。
醤油樽は写真のように黒い杉で作ります。
黒い木樽の方が丈夫なので、長く熟成させる醤油には適しています。
かつて醤油の産地、千葉県野田では灘製酒樽の「一空樽(いちあきだる)」と我々が呼ぶ中古樽、あるいは秋田杉の樽を使っていました。
和歌山では灘に出せない二級品の樽を、又、龍野(たつの)では、うすくち醤油用なのに最もアクの強い秋田杉の樽を使用。
唯一、小豆島だけは、灘五郷の酒樽に使用した残りの吉野杉製木製樽を贅沢に使っていたのです。
昨年、兵庫県たつの市が「うすくち醤油造りと匠の技の伝承記録」というDVDを製作しました。
醤油屋、酒屋、樽屋数軒が協力して出来たものですが、「たるや竹十」も最後の方に数秒間登場します。
昨春2時間余りかかって撮影したものです。
樽のつくり方がよく分かります。
��VDが手に入らない方は、ここでも容易に見る事が出来るようになったので、再録します。
うすくち醤油伝承保存会製作
2007年7月15日
漬物樽(つけものだる)の栄光と悲惨
酒樽屋の隣町に住むH夫人の漬物小屋(都市部でこんな空間を持つ贅沢!なんと井戸まで完備)には、
先祖代々伝わる、名物糠床がありました。
「たるや竹十」も、この糠床をお裾分けしてもらっておりました。
ところが、数十年愛用の漬物樽が傷んでしまったので、ある朝、H夫人は手近にあったプラスチック樽に替えてしまったのです。
結果は火を見るより明らか。伝来の名物糠床をダメにしてしまいました。
<
漬物樽にプラスチックの容器を用いると、こんな悲惨な事態になります。
しかも、漬物から出る塩分がプラスチックを溶かしたり、夏冬の温度変化で漬物樽が割れたりします。
また、木製の漬物樽の中でも柾目のものは過剰に水分が流出して長期保存には適していませんし、
人工樹脂でコーティングしたものは一見きれいですが、呼吸出来ないので木製樽の効果はありません。
たるや竹十製酒樽の一空樽(一度、酒樽に使った物の蓋を抜いて漬物樽に転用した)
H夫人の糠床ですが、
心機一転、「たるや竹十」に二斗漬物樽を依頼され、新たに昔のものより美味しいものを作成されました。
柔なことで挫ける下町のH夫人ではありませんでした。
2007年7月14日
木製の漬物樽(つけものたる)
いつもは、酒樽を作っていますが、注文があると漬物樽(たる)も作ります。
写真は一斗漬物樽(たる)と九升漬物樽(たる)を入れ子にした物です。
吉野杉の良質な板目材で作っております。柾目で作ると最初はきれいですが、
木目から水分が出ていってしまい、漬物には向きません。
長く貯蔵する容器には柾目ではなく、板目を用います。
漬物や味噌にプラスチックや陶器を使うと野菜や糠床、味噌が呼吸出来なくて窒息してしまいます。
漬物の本などにも木製の漬物樽(たる)は現在入手は無理などと書かれています。
「たるや竹十」では毎日、吉野杉の樽(たる)を作っているのだけれど・・・・・・・・
2007年7月13日
酒樽屋 四斗酒樽をつくる
作りかけの四斗樽(よんとだる)です。
四斗とは72リットル、即ち一升瓶が40本入りる樽(たる)です。
昔は酒樽(さかだる)といえばこの四斗樽だけでした。
その後、この半分の二斗樽(にとだる)、またの呼び名を「ハンダル」。
四分の一の一斗樽(いっとだる)、別名小樽(こだる)というように小型化され、
一斗樽主流の時代が戦後長く続きました。
今また、この四斗樽(たる)の存在感が見直されて、注文が多くなっています。
最後に泣き輪、またの名を尻輪という箍(たが)を入れて樽が出来上がります。
2007年7月12日
酒樽屋からのお詫び
酒樽屋が契約しているレンタルサーバー会社、メディアウォーズ社の「ステップサーバー」の初歩的なミスにより、当ブログの過去のデータが全て失われてしまいました。
このようなことは本来ありえない事故なのですが、ステップサーバー等という極めて脆弱性の高い会社と契約していた酒樽屋の責任でもあります。申し訳ありませんでした。
今後、過去のデータを少しずつ復旧しておりますが、皆様から頂いた貴重な「コメント」も消失してしまい、これらに関しては復元の方法がございません。
深くお詫びいたします。
また、現在も新しい「コメント」を投稿する機能は復旧しておりませんので、今しばらくお待ち下さい。
以下は恐ろしい内容の「ステップサーバー社」の言い訳です。
【ファイルサーバーのデータ管理体制について】
ステップサーバーのファイルサーバーシステムでは、データを複数のハードディスクに分散して保存
し、さらにパリティ情報という1台のハードディスクが故障しても別のハードディスクからデータを
復元する事が出来る「 RAID 5 」という高度なデータ管理システムにて運用しています。
しかしながら、「 RAID 5 」でデータを復元する事が出来るのは1台のハードディスクが故障した場
合までとなり、同時に複数のハードディスクが故障した場合にはデータ復元が出来なくなる特性があ
ります。
なお、ステップサーバーのファイルサーバーシステムでは、膨大なデータ量を取扱っている事と、常
時データアクセスが発生するファイルサーバーに対してデータバックアップを行う事でサーバーレス
ポンスが極度に低下する事を回避するために、データバックアップではなく「 RAID 5 」によるデー
タ管理システムを採用しています。
【サーバー障害およびデータ消失の原因について】
この度のサーバー障害では、上記で説明した「 RAID 5 」というシステムを構成する「 RAID装置 」の
部品(バックプレーン)および2台のハードディスクが同時に故障した事により、ファイルサーバーへの
アクセスが出来ない状況が発生し、ホームページ閲覧やメール送受信が出来ないなどのサービス障害が
発生しました。
なお、上記の障害を検知した際に「 RAID装置 」を構成している残りのハードディスクに保存されてい
るデータの保全を図るために、ハードディスクからデータのコピー(バックアップ)を開始致しましたが、
同時に複数のハードディスクが故障した場合にはデータ復元が出来なくなる「 RAID 5 」の特性により、
すべてのデータをバックアップする事が出来ず多数のデータが消失する事態となりました。
また、サーバー障害対応時に、残りのハードディスクからデータのコピー(バックアップ)を最優先で行っ
たうえで、障害の原因となった故障したハードディスクおよび「 RAID装置 」の部品(バックプレーン)
の交換を行ったため、長時間サービスが停止する事となりました。
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