2010年2月20日

樽屋も吉野杉の良し悪しを見落とす

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吉野杉は色も香りも最高なのですが、なにしろ自然のものです。
年に一度位、写真のように「目越し」という状態になる事があります。
この場合は、どのように手を施しても滲みを止めることが出来ません。
しかも、場所が樽(たる)の底です。交換以外に修理の方法はありません。
たくさんの吉野杉から樽(たる)に適した材料を選別することが酒樽屋の親方或いは、
番頭の役目なのですが、この場合は作業中の見落としと言えましょう。

幸い「たるや竹十」が使っている奈良県吉野郡の川上村周辺の杉だけは、
乾燥させて、もう一度使うと滲みが止まる魔法のような不思議な性質を持っています。
川上村特有の土質に依るようです。
しかし、この樽(たる)の場合は大事を取って底は交換することにしました。
「目越し」になる「ネキ」類と「風折れ(ウテ)」だけは樽(たる)には一切使う事が出来ません。
これらについての詳細は後日。

2010年2月19日

ディスプレイ用樽(たる)又の名を売場樽(たる)

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いわゆるディスプレイ用樽です。
店舗設計や施工会社の方からの依頼や、店頭のディスプレイに使いたいというお店から直接の
御依頼があったりします。
木樽に乗せて展示すると商品がいっそう引き立って見えるそうです。
店舗の売場に設置するので、「売場樽(たる)」とも呼びます。
高さが56センチあり、底は上から12〜15センチ下がった所に固定します。

この写真の樽(たる)は更に上へ笊(ざる)を乗せるという御指示だったので、
液体は若干洩れます。
全く洩れない物も作ることが出来ます。
漬物屋さんが直接樽に糠を入れる場合です。
この時は箍(たが)を更に二本増やします。当然少し値段が変わります。

右側は普通の一斗漬物樽(たる)高さが34センチなので通称34型と呼んでおります。

一番右側に少し見えているものは親方愛用の自転車に付いているCAMPAGNOLO,コルサレコードの前期型リアディレイラーと同じカンパのOMEGA のリム。




2010年2月7日

樽(たる)

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樽という漢字は木偏に尊と書きます。稀に土偏になることもあります。
もとは、尊だけで「たる」呼びました。

尊という字が角樽の形に似ているので、これだけで「たる」や「そん」と呼んでいましたが、
「尊い」と区別するために左に木を付けて「樽」となったといいます。

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こちらは撮影風景。アイルランドの写真家デビットさんのセッティング。
フランスの出版社の企画、写真集[SAKE](仮題)のための撮影です。
樽などをお貸ししたご縁で、彼の了解の元、酒樽屋も撮らせていただきました。
さすがにプロのセッティングですね、拙写(上の写真)もうまくいきました。



2010年2月4日

酒樽屋が使う植木樽

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本日、立春。東風、氷を解く

「氷が解けたら何になるか?」という理科の問題に「春になる」と回答した小学生に一票。
それを正解にして、◎を三つ付けた先生にも一票。


酒樽屋は酒樽(さかだる)ばかり作っている訳ではありません。
味噌樽(みそたる)、漬物樽(つけものたる)、樽太鼓(たるたいこ)は勿論ですが、
この他に、隠れた逸品があるのです。

「植木用の木樽(たる)」です。
木製樽は吉野杉と竹だけで作り、接着剤などの化学物質は一切使わないので、
大きく分類すれば樽(たる)も「植物」の一種です。
ここで植物を育てる訳ですから友達同士、仲良くなって当然。
樽(たる)は適度の水分を植木からもらい、余った水分は植木の方へ譲りながら、
互いに助け合っているようです。