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2009年2月8日

丸くないのに「樽丸」とは、これ如何に 木製樽の巻

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現在の「樽丸(たるまる)」の形です。
数日前に紹介した竹の箍(たが)で丸く巻いた本来の「樽丸」とは全く形態が変わりました。
「まる」という呼び名だけが木製樽の世界では残っています。

一束をふたつに分割し、かつ四角に機械で結束するようになりました。
「丸屋」(木製樽の材料を作っている業者)も作業が簡易になったと言っております。
写真のように保管し易く,運搬も楽なのですけれど、すっかり味わいがなくなりました。

左端が一尺一寸甲付側の内黒丸、真ん中が赤味丸、右端は一尺五寸赤味丸。
すべて,木製樽用です。
全然,丸くありませんね。

どんな形にせよ、とにかく「樽丸」がなければ木製樽を作る事は出来ません。







2009年2月6日

樽丸作りの実際 川上村にて

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それでは,木製樽の材料である「樽丸」は実際には、どのようにして作るかというと、
見ているだけなら、しごく単純なれど、まことに熟練を要する仕事です。
写真は川上村のふたりの山本さん(親戚ではない由)
左の山本さんが丸太をミカン割りします。
右に座る別の山本さんが銑(セン)という刃物で仕上げます。

未だ、切り立ての吉野杉ですから、水分がたっぷり残っております。
木目が素直に真っすぐ通った、即ち、よく手入れされた杉を使えば、作業は楽です。
そのかわり、原木の材料代は当然高くなります。
安くて悪い(手入れされていない)吉野杉を使うと、材の買い入れは安くて済みますが、
後の作業に骨が折れますし、何より良質の樽丸が出来ません。
樽屋としても作業にひと苦労、しかも良い木製樽が出来ないのです。

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こちらは出来上がった榑(くれ)を井の字型に組んで乾燥させている所です。
昔、灘にも浜があった頃は、この作業を海辺の砂浜で夏頃やっておりました。
乾燥させる榑の量も半端ではではなく、井の字型ではなく、「おおばい」といって、人間の背の数倍高く積み上げたものです。
夏休みに,「かくれんぼ」をするには格好の場で、その中に入って「おおばい」を崩し、
こっぴどく叱られたものです。

やはり、樽丸つくりは山の中でする方が気持ちよく作業出来ますし、良質のものが仕上がるようです。風土の違いから乾燥の具合が違うからでしょう。
山の中でも稀に台風で乾燥中の樽丸が流されたりしますが、灘の浜では台風で全てをさらわれた事が何度もありました。

DSC01776.JPG昔の「おおばい」と「樽丸」

2009年2月5日

樽丸(たるまる) 木製樽の最も重要な材料

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樽丸などと言いますと、どこの落語家かと思われるでしょうが、「たるや竹十」の倉庫の奥で
古い「樽丸」を発見しました。
ずいぶん日焼けしてしまっておりますが、一皮むけば良い色が出て来ます。
ここまで古くなると,香りが飛んでしまっていて酒樽には使えませんけれど。

このように、丸く束ねて竹で巻いているので「樽丸」と呼んだ訳です。
画像のように竹を用意して結束するだけの「箍師」という職業も吉野地方には存在しました。
材料の丈(長さ)を測り,規定の量を、予め巻いておいた箍(たが)の中に入れていくだけの作業ですが、なかなかどうして真似の出来る仕事ではありませんでした。

ひとつを「一丸(ひとまる)」と言います。
最近は、一丸を二分割した、半丸(はんまる)をひとつに四角く束ね、二束で一丸になるようになりました。
一丸では、余りに重いのと、四角い方が積み易いからです。
半分にしている今でも、四斗樽に使う、一尺八寸の樽丸の移動には骨がおれます。
丸い頃の樽丸を運ぶ時は転がしていたような記憶があります。

写真の左側が、板目の樽丸、右側が柾目の樽丸。
どちらも一尺八寸です。

業界では単に「丸(まる)』と呼ぶだけで互いに通じるのです。(丸くはないのに)

2009年1月23日

木製吉野杉樽における事故「めまわり」

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昨日の「吉野杉樽の不良品」の酒樽屋日誌で触れた「めまわり」の典型的な例です。
こうなってしまうと、使い道はなくて、燃やすしかありません。

樽丸師、樽屋の親方、樽職人の三人のチェックをすり抜けて来た不良品です。
樽丸は鋸(のこぎり)は使わず、鎌(かま)を用いて木目に沿って「割る」訳ですが、この時に木目が既に何十年前に割れている場合があり、肉眼では判断出来ない隙間を持っています。

このような榑(くれ)を使って吉野杉の木製樽を作ると箍(たが)の力で、このようにふたつに割れてしまいます。
折角の樽づくりも、これではガッカリですから、
材料の選別だけは先に挙げた樽に関わる三人が目を皿のようにして仕分けする訳です。

写真は「目回り」し易い「追い柾」という「柾目」に近い榑(くれ)の一種です。