2010年11月29日

酒樽屋がつくる一番大きな味噌樽(みそだる)

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今年も味噌作りの季節になりました。
去年と少し違う傾向は皆さんの作られる味噌の分量が多くなって来た事です。
これまでHP上で販売して来た「大」と「小」では間に合わず、
その倍や更に四倍の大きさの味噌樽が必要になります。
��0キロや30キロ或いは40キロの味噌つくりに対応出来ます。
これ以上大きい物は四斗の漬物樽に被せ蓋(ふた)を添付する方法を取ります。

蓋(ふた)を二枚、落し蓋(ふた)と上の被せ蓋(ふた)の二枚を必ず付けるのですが、
これも完全に接着剤を使用しない物に変更しました。

写真の味噌樽(たる)は高さが一尺八寸(約56センチ)もあります。
更に蓋(ふた)の厚みも七分(約2センチ)の厚みの丈夫な物になりました。
蓋(ふた)や底に使う材料ももちろん吉野杉です。

ちなみに左で植木鉢に使用している樽(たる)が四斗樽(たる)すなわち56型、
右側に見える小さい漬物樽(たる)が五升樽(たる)すなわち27型です。

2010年11月24日

酒樽屋が酒樽をつくる

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弊店の樽は全て吉野杉で作ります。
殊に重要な側面の「榑(くれ)」と呼ばれる箇所は、奈良県吉野郡川上村の原木のみ、
ごく稀に近隣の黒滝村、東吉野村の杉を用いる事もあります。
この三ヶ所の杉のみ、江戸期から樽材として植林されて来た杉です。
樽の需要が減ると共に建築材への転用が増えて立場が逆転しましたが、
近年、建築材も外材に押されて内地材の使用が減り、樽材の立場戻って来ました。
残念ながら、酒樽は固定価格なので樽材も余り高価な原木は使用出来なく、
更に良い原木自体が入手困難になって来ております。
吉野地方の木材市場に良質の杉が出品されなくなり、
樽丸業者がたいそう困惑している状況です。
幸い、弊店は自身の山林から酒樽に相応しい吉野杉を直接伐採し、皮を剥いて、
山中にて乾燥させ、ヘリコプターを利用して麓まで降ろします。
命をかけた仕事です。
杉に限らず、材木は麓からではなく、奥地から順に伐採しなければならないので、
切り出し作業が困難です。
ロープを張って他人の山の上を通過して降ろすと通過料を請求されます。
急いでいるときはヘリの方が費用はかかりますが、手続きが容易です。
最近は切り出し専用の林道を造る方式が採用されています。

建築材として植林していたので直径が約1メートル位の百年ものを贅沢に使います。
木目も密集していて色も良く,良い手入れが施されていて高価ですが、
作業はむしろ楽になります。
酒樽には本来60年〜70年ものが最適と言われていましたが、
適度な材を入手出来ないので仕方がありません。
��0年以上前の原木は径が大きい事と白太が経年により変色しているので良質の甲付材を多く取る事が出来ないという問題も含んでおります。
ちなみに百年以上の杉は老化が始まっているため、酒樽には適しておりません。
 
その後、四斗樽用、二斗樽用、一斗樽用、
及び二斗ハンダルセット用の四種(四斗ハンダルセットは一斗樽)の長さに切断し、
それをミカン割リにします。
その後、一番外側の白太は柾目に割り、桶に。或いは箸に使います。
外が白太で中が赤味の「甲付材」を最初に割り、続いて直ぐ中の赤味を割ります。
甲付材は一本の原木から一ヶ所、赤味材を二三枚取ります。
専用の刃物「銑(せん)」を用いて、仕上げ充分な風と日光にあてて乾燥させます。
 
蓋(ふた)と底は廉価に作る必要がありますので、吉野材の中でも一段階低い
原木を、今度は割らずに製材所で電動鋸によって挽きます。
これも充分な乾燥を経て、選別し例えば四斗樽の蓋ですと径が大きいので、数枚の板を竹釘を用いて継いで行きます。
これに鉋をかけて帯鋸で回し、丸く加工します。
人体に悪影響を与える接着剤等は一切使用しません。
アトピーやハウスシックの方に大変迷惑をかけるため、たとえ手間が何倍もかかれども化学物質は一切使用しないことにしました。
杉は柔らかい木ですから竹箍(たが)で樽を締める際に木目が圧縮されますので、
完成した樽を丸く仕上げるためには、底と蓋(ふた)は微妙な寸法ですが、楕円に加工しなければなりません。
底と蓋(フタ)の材料は樽丸をミカン割した際に木目が歪んでいたりする物も出て来ますので、これを利用する事も最近では増えました。
側も底蓋も原木の質。その年の気候、乾燥させる場所によって様々です。
完全に乾燥してしまうと酒樽特有の木香が抜けてしまい。乾燥不十分ですと、樽に狂いが生じますし、場合によってはカビ等が発生する原因になります。
カビと思われているうちの殆どが、杉の「アク」であり、カビは殆ど発生しないよう留意しております。
 
吉野杉は秀吉の時代に樽の材料のために日本で始めて本格的な人口植林をはじめたものです。この中心になったのが吉野郡の奥地である川上村です。
��000本の苗木を手入れして百年がかりで一本の銘木に育て上げます。
建築材にその地位を奪われましたが、最近また価値を見直されて来ました。
底と蓋(ふた)の一部は価格と材料不足のため、吉野郡の麓の材も使用します。
 
酒樽の場合、カビが最も発生し易い箇所は竹箍(たが)です。
内部に影響がないので、ビニール等で密封しなければ発生を防ぐ事が出来ます。
石油系化学物質は一切使用しないで江戸明治の手法に戻す事に致しました。
 





2010年11月1日

漬物樽(たる)の秋は何処へ行った?

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今日から,いよいよ十一月です。
酒樽屋は俄然忙しくなります。
先日までの猛暑が嘘だったように、過ごしやすい秋を飛ばして突然の冬です。
そう言えば、どうやら日本は猛暑と厳冬、豪雨の三季になって、春と秋は数日だけという、
変形熱帯に移っているようです。

今年も、つけもの樽(たる)の季節になりましたが、これだけ野菜が高騰し品薄ですと、
生野菜が高級食材になってしまい、サラダも贅沢品になってしまいました。
漬物どころではなくなって来ても仕方がありません。
それでも、接着剤を使っていない吉野杉の木製樽で漬物を作ろうと思われる方々、
漬物大好きの方々には、野菜の価格は関係ないようです。
全国各地から、毎日のように注文を頂きます。
樽屋竹十も漬物樽(たる)の価格改定は少し先に見送りました。