2006年10月31日

樽酒のおいしい季節になりました







秋の京都の宵、「おめん」に、ふらりと寄りました。

偶然、座敷で隣り合わせた、ご婦人お二人が注文なさったのは樽酒。
このお二人は樽酒が、めっぽう、お好きな様子で、暖簾ごしに樽があることを確かめてから入店されたとか。

「おめん」で樽酒が呑めるのは毎年10月から4月のみです。

なみなみと枡に注がれ、余りにおいしそうに呑まれるのを見て、思わず、お声を掛けました。

樽の上にあるのはサーヴィス用の片口

お店のカウンターに鎮座する酒樽の材は、実は「たるや竹十」のものなのです。
奈良県川上村の百年もの吉野杉です。

残念ながら作ったのは「たるや竹十」ではありませんが、この吉野杉の甲付側は「竹十」が支給して仲間の樽屋さんが作ったものです。



京都とニューヨークでしか食べられない「おめん」のうどん。(数年前までは神戸にも店がありました)

「おめん」四条店のご主人によると、「樽酒」を愉しみにされている、お客様が多いそうです。

しかし、残念なことに枡はヒノキ。来年から「杉枡」に替えてもらう様にお願いしました。
「おめん」の名物「樽酒」は更においしくなるでしょう。

2006年10月28日

漬物樽(つけものだる)は味噌樽(みそだる)にも使えます







茨城県のお客さまから、大きなサイズの味噌樽のご注文を頂きました。

味噌樽(みそたる)は本来、口が小さくて、背の高いものです。これは長期保存するため、空気に触れる部分を最小限にしているのです。
それに対して、漬物樽(つけものたる)は殆ど毎日使うので、底まで手が入り易いように、口を大きく作ります。

蓋も漬物樽(たる)は落とし蓋ですから、底より小さい物です。味噌樽(たる)の蓋は置き蓋なので樽(たる)の口より大きい物を使う必要があります。それぞれの地方で蓋の仕様は変わります。今回は関東のお客様なので特別に大きい物を作らなければなりません。
既製品にはないサイズなので、板に鉋をかけ組み合わせて作るのです。

味噌には本来、背の高い「味噌樽(味噌樽)」の方が適しているのですが、これは桶の製法で作るので手間がかかり、価格も高くなります。
「漬物樽(つけものたる)」でも充分おいしい味噌が出来ます。

来年にはNさん宅でも、きっと美味しい味噌が完成することでしょう。

2006年10月16日

樽屋(たるや)の「あり切り」





酒樽や樽太鼓を作る時には、蓋がきっちりと納まるように、側の内側に溝を切ります。
「アリ」と言います。

大工用語の「あり」と「ほぞ」と同じ意味で、凹部の呼称です。

鏡開き用の酒樽の場合は、蓋が開き易いように「アリ」は切りません。
「アリナシ」と呼びます。
勿論、漬物樽を作る場合も「アリ」は切りません。




アリ切りの道具、二種