2008年8月30日

酒樽の鏡開き ハンダルセット又は半ダルセット

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酒樽の鏡開きは、簡単なように見えますが、大切なイベントの中心になる儀式なのに、
万一失敗したり、いくら叩いても蓋(ふた)が開かなかったりすると大変な事ですから、
多くの方はあらかじめ蓋(ふた)を外して、形だけの鏡開きを執り行ないます。
最近では殆どのホテルの係の方が、専門の酒樽屋が驚く程上手に蓋(ふた)を開いています。

更に、簡略化して蓋(ふた)のない酒樽の上に蓋(ふた)をのせて置き、現場で酒樽に
清酒を入れるという方法もあるのですが、絶対に失敗はありませんけれど清酒に木香が付きません。

写真の酒樽は「36ℓハンダルセット」といって下半分を発砲スチロールの台で上げ底にしたものです。当然72ℓもあります。
菰(こも)の隙間から白い発砲スチロールがのぞいているので、直ぐに見分けがつきます。

実は20数年前に伏見の某大手蔵元と樽屋竹十他が共同で開発したものなのです。
当時、他の樽屋の反撥に遭い、ひどい中傷を受け、軽蔑されたものですが、
数年後には手のひらを返したように全国から竹十に手法を教えて欲しいと懇願して、毎日よその職人達の竹十詣が続きました。
一時は「ハンダルセット」が主流の時代が長く続き、材料の供給が間に合わない程でした。
もし、当時「ハンダルセット」を開発していなかったら、良質の吉野杉が手に入らなくなってて、需要に応じきれなかった事でしょう。

今は「ハンダルセット」も清酒の消費量の激減もありますが、やはり本物が良いという
傾向に戻りつつあり、役目も一段落を終えたかなという印象です。

名前を決める時、「ハンダル」とは二斗酒樽(36ℓ)の別称「半樽」と紛らわしいので猛反対したのですが、他に適当な名も思いつかず、蔵元の意見に押し切られました。

当然、必ず菰(こも)を巻かねばなりませんので、裸に出来ない事、用済みの樽が再利用不能という点が弱点です。
酒樽屋としては、やはり昔ながらの全部、吉野杉を使って酒樽を作りたいのが本音です。

当時、別の大手蔵元数社は、この大きな流れを無視して価格が高いにも関わらず全部が吉野杉出来た酒樽を使い続け、今に至っております。


この酒樽は菰をあらかじめ中に巻き込んで鏡開きをし易くしています。

また、「赤紙」は昔の名残で、呑み口の場所をわかり易く示している訳です。
この酒樽には絶対に呑み口がない訳ですから、単に赤い飾りでしかありません。
本式の巻き方ですと蓋(ふた)の部分にも、もう一カ所「赤紙」を巻きます。

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