四国の金比羅宮の祭に「流し樽」という儀式があります。
宮本昌孝氏の「こんぴら樽」という小説の冒頭で簡略に説明されているので紹介します。
「こんぴら樽(だる)」。
流し樽、流し初穂ともいう。
金比羅参りをしたくとも、自分では参詣出来ない者が[奉納金比羅大権現]の旗を立てた
空き樽に初穂料を入れて、これを海に流すという習わしである。
俗謡にいう。
沖のかもめか こんぴら樽か
今もゆらゆら 波の上
こんぴら樽を拾った者は、金比羅宮へ代参して、これを奉納しなければならぬ。」
講談社 1995年初版 後に改題して文庫化 初出同年刊「季刊歴史ピープル」初夏号
「りや女の仇討ち」を改題
今では、地元の各企業が祭に協賛して各社の旗を酒樽に付け、
海には流さず直接、金比羅宮に奉納するようです。
一空樽(一度酒樽に使った古樽)が現在は入手し難くなって来たので、
樽屋に新しい酒樽の注文が入ります。
奉納する酒樽ですから、普段より襟を正し、材料も心持ち良いものを吟味して作ります。
写真は昨年、若冲と応挙の展覧会を観に行った折に最上段まで登って撮影したもの。
因に酒樽の中でも上段左の縄の架かっていない物は本当に酒樽として使われた「一空樽」で
「たるや竹十」製ではありません。
全ての酒樽には三ツ輪掛けという特殊な縛り方の縄を掛けて奉納します。
0 件のコメント:
コメントを投稿