2006年6月20日

杉樽の基本、樽丸(たるまる)








上の写真のうち、竹の箍(タガ)で巻いた古いものが文字通り「樽丸」。
山では一丸(ひとまる)に同分量の杉材を入れて巻き上げなければなりません。
杉の原産地、吉野地方には、昔は樽丸の結束だけを専門とする職人がいた程です。

現在はこれを二分割して、写真の左の様にビニールで結束しているので、味気なくなりました。

樽屋が「丸(まる)」と呼ぶものは杉樽を作るときに最も重要な部材で、正確には「樽丸」と言います。昔は上の写真、右下のように、丸く束ねて運送していたからです。

一枚ずつは側(かわ)、または榑(くれ)と呼びます。



立っている五枚の側(かわ)のうち、右から三枚目の物が甲付側、酒樽に使います。
江戸時代から戦前までは酒樽といえば甲付に限りました。
赤味側は醤油樽用でした。
しかし昭和30年代の醤油樽の廃止に伴い、行き場を失った赤味側の用途を巡って酒造組合と製樽組合が協議の結果、甲付側を特級酒(今の特撰)用に、醤油用であった赤味側を清酒の一級と二級(今の上撰、佳撰)に使用することになりました。

写真右から二枚目が、その赤味側です。
左の二枚が白太です。見た目はきれいなのですが水分を漏らす性質を持っているので樽太鼓や展示用の樽に使います。
赤味側の中でも「あく」が出て色が黒くなった物を黒側と呼び、漬物樽や味噌樽に使います。
漬物樽や味噌樽に甲付樽を使うことはありません。長持ちしないからです。
漬物樽や味噌樽のように長期にわたって使用する物には最上の甲付といえども適材とは言えません。

一番右側は、赤味側と黒側の中間に位置する物で中赤と呼びます。
黒丸(黒側)は名の通り、更に黒い物です。色は悪くても、最も丈夫で、値段が安いため最近ではこの二種類の材料も清酒樽に使われるようになり、清酒樽の材料も昔ほど厳密ではなくなってしまいました。

樽を菰で巻く昔の習慣が災いして、外から見えない杉樽の品質が日に日に安かろう悪かろうという傾向に変化しています。残念なことです。
酒樽には、やはり甲付樽、若しくは上質の赤味樽を使っていただきたいものです。

樽屋としては、菰を廃止して、杉樽そのものを皆さんに見て頂きたいと常々思っております。

左端の太い物は一番外側で木皮(こわ)又は「やせ」と言い、柾目に割って「寿司桶」などに使います。
一番左で横になっている物は更に外側の杉皮です。数奇屋の屋根や塀に用います。

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