2010年6月8日

杉樽(たる)に於ける「目回り」

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酒樽(たる)に使う樽丸(たるまる)の中にも非常に稀ですが、
写真のような不良品が混入することが一年に一度位あります。
木口の黒い部分の冬目が割れているところが見える筈です。

これは「めまわり」と呼んでいる状態で、木目に沿って杉が縦に割れてしまっているのです。
このような材料は樽(たる)に組み立てる時、竹の箍(たが)の力に耐えられないので、
どんな種類の杉樽(たる)であっても使用不能です。
廃棄する他に手段はありません。
本来、ここまで歴然とした状態のものは樽丸(たるまる)の製造過程で見付け次第廃棄しますので、樽屋(たるや)の工房に登場することはあり得ません。

これは、樽屋(たるや)の倉庫に保管中、乾燥して木目が割れてしまったのでしょう。

こんな状態になる原因は山林内での「強風」です。
台風等で強い風が吹くと、当然ながら杉の大木も大きく揺れる訳ですけれど、
ある限界を越すと、このように垂直に木目が割れるか、それとも、
かつて紹介したような「風折れ(かざおれ)」又の名を「うて」という水平にヒビが入る
被害を受けることになる訳で、共に樽(たる)に加工出来ないため、焼却します。

更に強い風に遭った杉は原木まるごと地上に倒れ、山から搬出する値打ちもないので、
山林の中に放置されたままになっています。

決して「風が吹いたら桶屋が儲かる」訳ではないのです。

「めまわり」も「うて」も光線の加減によって見落としにくいものですから、
材料の選別には細心の注意が必要です。

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