杉樽を裏返したところです。
黒っぽい部分に二本の縦線が見えます。
これは不良品で、「蟻道(ぎどう)」と呼び、ここから水分が漏れます。
この黒い線は本当に蟻が通った跡だと思っていましたが、実はこの年輪の年に何か大きな雷や地震など、気象に大きな異変があった証拠なのです。
因みに台風で杉の木が大きく揺れた時には「うて」と言って、今度は横に罅(ひび)が入ってしまいます。
「うて」は杉樽の材料としては致命的でタガを締めると木は折れてしまいます。
建築材として使う時には支障はありません。
この他、「陽疾(あて)」といって岩石等が多い山で育った木は杉材も地質に負けないように硬くなってしまいます。これも杉樽材には不向きです。
樽職人の間の隠語で「あて」というのは酒の肴の事ではなく、悪いことの謂(い)いに用いられています。
こうした材料の選択も親方の重要な仕事のひとつなのです。
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