寒くて当然なのですが、今年の冬は尋常ではありませんね。
神戸という海浜都市といえど、今年の寒さは他の北国と変わらないようです。
むしろ山と海に挟まれた傾斜の強い街ですから、
「六甲おろし」と「浜風」が四六時中吹いていて、
体感温度は実温度より5度位は低いのです。
ただ、この風土が酒造りに欠かせないもので、
樽づくりにも、この寒さと薄暗さが不可欠なのです。
陽当たりが良く、明るい場所では樽(たる)が乾燥し易いので、
古書店が背文字が焼けないように北向きに建っているのと同じように、
大抵の酒樽屋(さかだるや)は北向きで、中の人間には決して良い環境とは言えませんが、
主役は酒樽(さかだる)なのですから仕方がありません。
写真は南側の建物が解体されたので、約50年ぶりに姿を見せた酒樽屋の裏側。
建物の下部に窓が並んでいます。
ここに樽職人が並んで、一枚の窓の下にひとつの「みせ」という作業場があったのですけれど、
実は、元来この窓は酒造りの際に空気と光の出し入れを加減するために設けられた、
弁の様なものだと後に知りました。
この建物は昭和30年代の区画整理の折りに建てられた比較的新しいものです。
右側に江戸時代の蔵が四棟並んでいましたが、残念ながら先の震災で失いました。
吉野から来る酒樽(さかだる)用の杉の原木を製材し、
「オオバイ」という形で乾燥させるためには、この前に見える砂地が丁度良い空間でした。
今は建売住宅が並んでしまい、二度と見る事の出来ない風景です。
昭和初期に時代を戻せば更にその前は、すぐ海です。
「昔の御影」より
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