2009年3月26日
吉野杉を使った木樽の作り方 その5 つっこぼり
二本の鉄輪で支えられた木樽の内部のうち、底を込める部分の側の段差(目違いと呼びます)を、丸みのある特殊な鉋(かんな)で削り、平坦に加工して底との隙間をなくします。
この作業は「つっこぼる」と謂います。
ですから、この作業に使う特殊な鉋(かんな)を「つっこぼり」または「つっこぶり」と呼びます。
右が四斗用の大きい物、左が一斗や二斗に使う小型の物です。
細かい作業や小さい樽を作る時の為に、もっと小さい物もあります。
鉋(かんな)の両側に出ている棒状の部分を指で支えて削るのです。
例によって、作業の行為と道具の名称が同じです。
単に「丸かんな」とか「内かんな」と呼ぶこともあります。
台にも刃にも丸みがあります。
この特殊な道具を作る職人も殆どいなくなりました。
かつては堺に沢山の樽道具職人がいましたが現在では皆無です。
杉の産地吉野と酒の本場である灘の中間に、樽丸つくりと樽つくりに不可欠な刃物職人がいた事は偶然ではないでしょう。
今は兵庫県の三木市に一人だけ残っておられます。
普通の平かんなに丸みを付けて改造したりしてみますが、専門外の仕事は容易には出来ません。
どんな仕事でも道具作りが物作りの重要な要素であります。
慣れれた道具を修理しつつ使っております。
この工程は地味な割に以外と時間と手間がかかる作業ですけれど、底が入る部分を整える訳ですから、手を抜くと洩れの原因の一つになります。
当然丁寧な仕事を要求される訳です。
殊に味噌樽や、漬物樽のように長い年月使う木樽の場合、むしろ酒樽以上に丁寧な作業を要します。
近年、この作業を省略し、機械で円形の溝を作って、その溝に底をはめる手法も考案されましたが、この方法は作業が楽にはなりますが、手作りの底の外周や樽丸から加工した側の厚みの微妙な違いに対応出来ないので、「たるや竹十」では昔の手法に戻しました。
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