2015年3月1日

酒樽作り 解説再録 其の弐

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写真は菊正宗酒造、嘉宝蔵の会場にて

��側拵え
こうして出来上がった杉材は竹のタガの中に丸く梱包していたので「樽丸」と呼びます。一丸で33尺、並べると約10mで、一丸で5^6個の樽が出来ます。
先ず、銑と言う刃物を使って、木の厚みを外側と内側から揃えます。
その後、この正直台という銑をはめ込んだ危険な台感で側面を削ります。「正直押し」といいます。判りにくいのですが,真ん中を僅かに膨らませます。
正直に押さないと洩れるので、「正直」と言います。
これは洋樽をバラした物ですが、こんな風になっています。
こうすることによって、洩れが出にくい上に少ない材料で樽を作る事が出来る訳です。この下準備が非常に大事なのです。
今日,こうして菊正宗の前掛けをしていますが、これは宣伝をしている訳ではなく、削る時に使う「腹当て」と言う道具を挟むための必需品なのです。

��樽を立てる
底用と蓋用のふたつの仮輪をしっかり持って、拵えた「榑(くれ)」を15〜16枚並べます。途中5〜6枚の『輻(や)』を均一にいれます。
左手でしっかり仮輪を持って前に倒しながら,組むので作業台(見世板と言う)は少し前に傾いています。榑の内径と底や蓋の外形が一致するように組み合わせます。パズルが終わったら逆さまに向けます。
底に鉄仮輪をいれて固定します。全体を上下して歪みをなくします.小槌で榑の段差を揃えます。
口輪と言う蓋を支えるタガを入れます。大槌と締め木でタガを下まで叩きます。
「真ちゅう」と言う底のゲージを填めて、替わりに鉄仮輪を抜きます。
これで樽の形が整いました。少し真ん中が膨らんでいるのがわかるでしょうか。

 5内外を削る
底が入る部分を「つっこぼり」という丸鉋を使い段差をなくします。
底を込めます。バットの様な叩き棒で押し込み、立て棒と言うゲージで深さを測ると同時に底を水平に整えます。ここで容量が決まります。
銑を裏返して、蓋が入る部分の小口を揃えるために切って行きます。
「アリ切り」と言う道具で蓋が入る部分に溝を作ります。
溝に沿うように蓋を込めます。込め易いように蓋は竹釘で継いであります。
底も同じです。
日本に今,樽屋は10軒ほどしかないんですが木工用ボンドを使わないのは菊正宗とあと2軒だけです。
この間、小西六というボンド会社の社長に会う機会があったんですが、そこの社長から樽にはボンドを使わないでくれと逆にたのまれました。別に毒性もなにもないんですけど。
「目違いかき」又は「はらむき」と言う細い銑で外側の段差を取り、綺麗にします。次に入れて行くタガの力が均一にかかるようにする意味もあります。
残りのタガを入れて行きます。




  6タガと仕上げ
有馬から山陰にかけての真竹を割って、角を削ったものを巻いた物を樽に入れて行きます。
口輪の補助をする「重ね」または「かしら」と言うタガ。
一番太い「胴輪」又の名を「大中」、そして「小中」次いで「三番」という底を支える重要なタガを入れます。少し堅く締めます。三番が切れたりした時に酒が洩れない役目をしている「二番」をいれます。
底の段差を銑で削り取り化粧します。中側も内銑で整えます。
尻輪,止め輪,又は泣き輪と言う最後のタガを作ります。
四回巻きます。本当は全部のタガを巻きたかったのですが長くて危険なので、一番短い泣き輪だけを実際に巻きます。
泣き輪だけは力任せに叩けず,削るのも難しく、職人泣かせなので「泣き輪」と言うそうです。
全部で7本のタガが入りました。中国では「七」が一番縁起が良い数字だそうで、13世紀、宋の時代に樽の技術が到来した時から7本だったと言います。
ひっくり返し。酒の注ぎ口に「天星」を入れると仕上がりです。
あとは無駄なタガの先を切り、少し水を容れたところへ空気を送り洩れの検査をします。
蓋が丸くて昔の手鏡の様なので蓋の事を「カガミ」とも呼びます。
これを開くので鏡開きと言う訳です。

昔はこの四斗樽を一日に20個つくる事が出来なけれれば樽職人とは呼べませんでしたし、
そういう職人を四人以上かかえていて、注文があれば一日に四斗樽80〜100丁を蔵元に納めなる能力がなければ樽屋とは言えませんでした。
��3石(約6000リットル)の大桶で出来上がった酒を一気に樽に詰め替える必要があった訳です。







 







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