2009年10月20日

酒樽(さかだる)における呑み口(のみくち)の立て方

これが出来ないと、いくら酒樽(さかだる)が目の前にあっても、
美味しい樽酒(たるざけ)を呑む事が出来ません。
「鏡開き」をするなら、このままでも樽酒(たるざけ)を呑む事は出来ます。
「鏡開き」の段取りに関しては、また別の機会に詳細を記述します。

��最初に用意する道具 
木槌(直径3センチから4センチ位)
清潔な布
小型のプライヤー
*よく切れるカッターナイフ(菰巻きに立てる場合のみ)


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上の写真が「呑み口」セットです。
①先ず、「呑み口」セットを写真のように二つにはずします。

正確には上の尖った物を「呑み」と呼び、ヒノキで出来ており、
下の赤い丸印の付いた円筒形の穴が貫通した物を「呑み口」と謂います。
これは桐の木で出来ていて、太さ(直径)から「八分」と「六分」の二種があります。



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②酒樽を寝かせます。
その時、写真のように木栓「ダボ」を上にしておきます。
酒樽をブロックなどでしっかり安定させます。
ブロックや木片などで酒樽の底部、または両側に置いて樽が転ばないようにします。
さらに寝かした樽の、床に接している部分に木槌を挟み込んで、樽の上部を水平にします。
このように丸い酒樽を動かないようにし、また水平にすることで作業がやり易くなり、きれいに仕上がります。

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③木製栓「ダボ」をプライヤーで挟みます。
プライヤーを注意深く動かしながら緩めて行き、最後に完全に抜きます。
ダボ穴周辺は酒で濡れ易いので、その際に溢れた酒を清潔な布で拭き取ります。
この工程を怠ると黴の発生原因となります。

本来の抜き方は、小槌の柄の先を利用して左右に少しずつ叩き、緩んだ頃合いを見て、手で掴み抜くのですが、プライヤーで挟む方が簡単です。


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抜いた「ダボ」は後で酒樽を漬物樽や樽太鼓等に再利用する際には必要になりますので、失わないないようにします。
因みに「ダボ」も昔は杉の芯材で作りましたが、滲みにくいという利点から、今は高野槙が主流です。地方によっては「腹星(はらぼし)」とも呼びます。



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④先に準備していた呑み口の赤い印の入った方を、開いた穴に木槌で軽く垂直に叩き込みます。
余り強く叩くと酒樽の穴が割れて洩れの原因になりますので、ゆる過ぎるかなと思われる位が程よい強さです。
緩ければ更に叩けば良いのですが、強過ぎると割れてしまった酒樽の穴は元には戻りません。
この力加減が「呑み口立て」の中で最も重要なポイントです。


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❸菰(こも)が巻かれている場合は縄に結んでいる赤い紙を目印にして、その下部にある「ダボ」を探り、木槌の柄などを使って菰を左右に押し開き空間を作ります。

「ダボ」が酒樽の正面に来ている場合は、「ダボ」のある部分をカッターナイフで四角い小窓のように菰を小さく切り取って、その部分から裸樽の場合と同じように「ダボ」を抜きます。



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❹裸樽の場合のように、呑み口を軽く叩き込みます。この時も細心の注意が必要です。
歪まないよう垂直に数回に分けて叩きます。

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⑤「呑み口」セットの残った方の先が尖った「呑み」をそっと「呑み口」に差し込みます。
この時は道具を使いません。少し緩めに差し込むだけで、木と木が密着するため手の力で充分なのです。
決して、木槌を使わないで下さい。湿気を含むと後で抜けなくなりますから。


これで「呑み口」を立てる事が出来ました。


後は酒樽を元のように縦に起こし、適度な高さの台に乗せ、必ず「片口」のような大きめの容器に一旦、酒を酌んでから盃やぐい呑み、桝など好みの器に移します。
台に乗せるかわりに、机のような所に酒樽を置き「片口」を机の下に持ち、流れ出る酒を受け取るという方法もあります。
「片口」が見近にない場合は、趣は無くなるものの中位のボゥルで代用することも可能です。



なお、一度立てた「呑み口」は決して抜かないで下さい。
水道の蛇口等と違い、酒樽の「呑み口」は少しずつ緩めて、加減を見つつ隙間から酒を出す道具です。
抜いてしまうと、酒樽から勢いよく酒が吹き出してしまいます。
何らかの不具合から酒が出にくい時は酒樽の蓋に錐(キリ)で小さな空気穴を開ける場合もあります。



トクットクッと「呑み口」から注がれる樽酒。
一段と清酒の美味しい季節になってまいりました。

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