2009年12月29日

酒樽屋のお八つ  その弐拾捌 瓦煎餅

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神戸の名勝「湊川神社」の筋向かいにある有名な「菊水總本店」の瓦煎餅です。
創業は明治元年といいますから、140年の老舗、湊川神社に参る人々のお土産の定番でした。
本店は震災前までは確か木造三階建ての立派な店舗だった記憶があります。

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「名所独案内」等にも、そんな光景が見えます。


誠に残念ながら、来年の一月末で全店閉店解散だそうです。
軽い食事も出来て、菊水茶も美味しい神戸を代表する名店の一つです。
UCC傘下になってからか、良い珈琲も飲めるようになっていて便利でした。

神戸らしい店が次々なくなっていって、寂しくなります。
来月中に、もう一度行ってみよう。

湊川神社は神戸では「楠公さん」と親しまれ、また多くの漢詩人にも詠まれました。

宿生田                 

千歳恩讐兩不存,
風雲長爲弔忠魂。
客窗一夜聽松籟,
月暗楠公墓畔村 菅茶山


酒樽屋の失敗

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酒樽(さかだる)にせよ、漬物樽(たる)、味噌樽(たる)など、どんな樽(たる)でも、
短冊形の吉野杉を丸く組み立て、底と蓋(ふた)を込め、最後に竹の箍(たが)で締める訳ですが、
写真の部分が切れてしまうと箍(たが)本来の強度を失ってしまいます。
酒樽、漬物樽、味噌樽など、洩れないように作らねばならない樽は勿論のこと
樽太鼓なども使用中に竹がはじけてしまう可能性があるので、箍(たが)を巻き直さねばなりません。
長い竹の太い部分を「元」(もと)、先端付近の細い部分を「末」(すえ)と呼ぶのですが、
箍(たが)を巻いた(結ったとも謂う)時に「元」の下が切れた箍(たが)は、
切れ易いので不良品として廃棄します。

写真の内、下の箍(たが)は正常な状態、上の箍(たが)が「元下(もとした)」の切れたものです。
樽(たる)に巻いて(結って)力がかかり、切れる場合や、最後の仕上げの際に誤って切ってしまう時、
あるいは初めから竹自体の細胞が切れ易い場合など様々です。

とにかく「元下(もとした)」の切れた樽(たる)は長持ちしません。

この部分を「元下(もとした)」と呼びます。
箍(たが)の中で一番大事な部分です。

2009年12月27日

酒樽(さかだる)の荷造り



酒樽が出来上がっても、遠い地域に発送するためには梱包が必要です。
この酒樽は最初から樽本体から蓋(ふた)を外しています。
「鏡開き」は難しいものではないのですが、初めての方も多いので
蓋(ふた)を樽(たる)から抜いてしまった空樽の依頼が最近は増えました。
別途に一升瓶入の清酒を10本発送して、新年会などの現場で木樽に酒を入れる訳です。
この方法は吉野杉の香りが清酒に付くための時間が短く、
杉の木香が弱いので本来の樽酒を楽しむことが出来ない点が短所なのですが、
何日か前から空樽へ清酒を入れておき、木香が付いた頃を見計らって、
一旦別の容器に移して当日、その酒を樽に戻すと樽酒が楽しめます。
ちょっと面倒ですね。
蓋(ふた)を外した樽(たる)に清酒を入れて移動すると、こぼれますから仕方がありません。

この紐の掛け方は「三ツ輪掛け」といって菰(こも)を巻かない裸の酒樽の輸送に使う方法です。本来は荒縄を使います。
今は「仮巻」とも呼びますけれど、本当の仮巻とは酒樽に無地の菰を巻く事なのです。

この巻き方は簡単そうに見えますが丸いものを綺麗に梱包することは意外に難しいものです。
それに、たくさん巻かねばならないので、スピードが早くないと仕事になりません。

雑誌に親方が !?

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酒樽(さかだる)とまったく関係ないのですけれど、「SUMAI no SEKKEI」(住まいの設計)という住宅雑誌の2月号に親方の書庫が掲載されました。書庫には樽は勿論のこと、吉野杉や酒、醗酵食品、灘五郷や全国各地の酒どころ等々の資料があります。今回はそれを離れての紹介なのですが…
個人的には私の前のページ(100頁)に掲載されている大和田茂さんの自転車工房に興味を抱きました。彼も「さかしま」を読んだことがあるそうで、ちょっと驚きました。
樽屋の親方は書物も好きですが、ロードレーサーにも子供の頃から惹かれて続けております。

今、書店に並んでいるでしょうから、機会がありましたら立ち読みして笑ってやって下さい。



2009年12月25日

酒樽屋のクリスマス

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酒樽屋にとって,クリスマスの前後は一年で最も忙しい時期です。
街の賑わいとは縁遠く、毎晩遅くまで樽を作っております。
もちろん周辺の蔵元も同様です。
近所の教会の前を通り、光る樅の木が目に入る時だけ聖夜なんだなと思い出します。

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夕暮は、こんな感じの「六甲カトリック教会
入り口付近に「聖母子像」のレプリカがあり、プレートに下のように書かれております。

From the citizens of Antwerp
in memory of the victims of the Kobe earthquake
January 17,1995

2009年12月18日

年末や正月に木製樽を使って本物の樽酒を。

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ここ数日、関西も突然寒くなってまいりました。
寒い時にはビールではなく、やはり清酒(日本酒ともいうらしい)です。

いよいよ新年が近づいてまいりました。
年末のカウントダウンに樽酒で鏡開きをされる方や、正月に御家庭で樽酒、
あるいは忘年会や新年会に木製樽詰の本物の樽酒の予約が殺到しております。

正月に呑むためには5日から7日前に酒樽に清酒を詰めておかねば樽酒にはなりません。
そうすることによって、吉野杉の香りが丁度良い程度に酒についてくるというわけです。
これ以上の期間、酒樽に清酒を詰めたままにして置くと逆に味が落ちて参ります。
丁度、気温が低い時期ですから2週間位は大丈夫ですが、暖房の効いた屋内においた場合は
この限りではありません。

樽酒の鏡開きが不安だという方には、写真のように最初から蓋(ふた)を外したタイプもご用意出来ます。


ガラスの味がする一升瓶や、ましては紙の味たっぷりの紙パックの酒は廉価で、便利ですが、新年位は日本文化の象徴でもある酒樽詰めの樽酒で正月を祝うのもいいものです。

2009年12月17日

酒樽における封印された星☆

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酒樽に酒を詰め終わると「天星」と呼ぶ木栓を蓋(ふた)と同じ高さまで叩き込み、
封紙を張り、蔵元の印を押して天星の封印が完了です。
樽を床に水平に置いて木栓を叩いてもなかなか上手く入りません。
酒樽を少し斜めに起こした位置で木槌で「天星」を叩けば、気持ちよく蓋の中に入って行きます。
「天星」は高野槙という柔らかい材料で出来ていて、酒の滲み等がありません。
木製の風呂桶に使う材料だからです。
今では高野山から来たものより木曽産の方が普及しています。

星の封印は簡単な作業なのですが、当然ながら酒税法のもと外部の人間が手を下してはいけないのです。
これは酒樽屋の仕事の範疇ではなく、造り酒屋の仕事です。
小売りの酒販店や居酒屋の人々が酒樽に酒を詰める行為も禁じられています。★

2009年12月15日

木製芯樽の復活を望む

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よく神社等に奉納されている菰巻き樽(たる)の中身は実は酒樽ではないのです。
菰を解くと木製の酒樽が出て来ると思いきや、実は発泡スチロールでした。
このような樽を飾り樽と呼びます。略して「かざり」とも言います。
昔は良質ではない材料を使って酒樽屋が木製樽をつくっていました。
当時は樽屋では、その木製樽を芯樽と呼んでいました。

一般に販売されているものでもなく、また入手することも困難な商品です。
��買う人も余りいないでしょう)
中が見えないとはいうものの、やはり飾り樽の中も木製に戻したいものです。


2009年12月14日

樽作りに疲れた時にはラヂオ體操を




樽づくりに限った事ではなく、何事も物つくりの際には背中をまるめ、根をつめて作業を進めるものですから必ず肩が凝りますし、姿勢も悪くなってしまいます。
たった今、パソコンに向っているこの時にも、随分眼が疲れますし肩も凝ります。
間をおいて、適度の休憩をとった方が、かえって効率が良くなるものです。

子どもの頃に一番苦手だった「ラヂオ體操」が最近は妙に人気です。
今ではテレビでも放映するから「テレビ體操」と言い換えられておりますが、
やはり「ラヂオ體操」と呼ぶ方が、断然、親しみが持てます。
訊けば80年以上前にアメリカで考案されたものだそうです。
第一、第二のほかに幻の第三もある事までは知りませんでした。

時間が許せば、樽づくりの合間に、みんなで「ラヂオ體操」をするようにしたいものです。
近所の会社でも始業前に朝礼の後、社員全員がラヂオ體操をしている光景をよく目にします。
   





「........僕は柔い掌をひるがえし
深呼吸する
このとき
僕の形へ挿される一輪の薔薇」

     村野四郎第二詩集 北園克衛装釘「體操詩集」昭和14年刊より
 
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2009年12月12日

酒樽屋がつくる一番ちいさい漬物樽

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小さい漬物樽の御注文が多く、作り置きが売り切れてしまったので、
��2月の半ば、酒樽製造に忙しい時期なのですが本来の仕事が終わった後に時間を作ってまとめて作ることにしました。
画像は五升(9リットル)樽(タル)。高さが九寸(約27センチ)なので、27型と呼んでいます。

実は、この寸法が酒樽屋がつくることの出来る最小の寸法なのです。
稀に樽屋が三升や一升の樽(タル)をつくることもありますが、樽屋にとっては難しいものです。
これらは桶屋(おけや)、その中でも「こんこん屋」という主に小さな道具をつくる桶師の仕事なのです。



酒樽屋 古い感じを出した店舗展示用の樽(タル)を作る

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樽屋の倉庫の奥から古い樽(タル)をいくつか探し出して来て、更にその樽(タル)に古い竹箍(タガ)を組上げて、店舗用の展示樽をいくつか作りました。
左側は参考までに普通の木製樽、右側が古色を出した木製樽。
お客様の依頼だったのですけれど、面白い雰囲気の樽(タル)が出来上がりました。
着色などの細工は一切しておりません。
何十年も前に作った樽(タル)の様ですが、
この樽(タル)は単なる「古樽」ではない水の洩れない新品なのです。
酒樽屋は注文さえあれば、こんな不思議な木製樽を作る事も出来るわけです。

2009年12月5日

酒樽屋のお八つ  その弐拾漆 ゆべし

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平安の武将、坂上田村麻呂が二羽の丹頂鶴に育てられたという伝説に因んだ形をした、
「ゆべし」です。
という訳で福島県郡山市独特の三角型をしていて、柚の代わりに芥子の実がまぶしてあります。

かんの屋 本店文助
〒963-0911 福島県郡山市西田町大田字宮木田39
TEL:0247-62-2016
営業時間 AM 8:30~PM 7:00 (年中無休)

2009年12月4日

酒樽屋 平山郁夫美術館へ足湯桶を送る

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作日、お亡くなりになった平山郁夫氏の生地である生口島に建つ同氏の美術館からの依頼で、「足湯桶」を10個作りました。
一昨日UPした「ハンダルセット」を改造して「桶もどき」を作りました。
何回ものメールや電話のやりとりの後、足場桶を納品し、係の方々にたいへん気に入って頂いた直後に急逝されました。
平山氏は療養中だったとのことで、御元気になって鎌倉から生口島(いくちじま)へ帰られた折には、この「足油桶」を使って頂こうと話していた矢先でしたので酒樽屋もたいへん驚きました。

生口島は尾道から今治へ和樽長い橋の途中にあり、そのしまなみ海道を自転車で和樽のが恒例になっています。その途中で生口島で皆さんに休息してもらおうという訳です。




2009年12月1日

酒樽屋から酒樽が発送される

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新酒が出る時期になりますと、酒樽の注文も多くなります。
写真の酒樽は「ハンダルセット」と呼ばれる、上部半分だけの特殊な樽(タル)です。
四斗樽は72リットル入りですから、一升瓶に換算すると40本分。
なかなか全部を呑みきれるものではありません。
どうしても酒樽の半分位の清酒が残ってしまいます。
そこで、酒樽の真ん中にもう一枚底を入れた二重底の樽の需要が増える訳ですが、
下半分が無駄だという理由から、写真の酒樽のように上部だけを吉野杉で作り、
下には発泡スチロールの台を入れて菰で巻くという変則樽です。
��0年程前に某大手酒造メーカーと樽屋竹十が共同開発し、同業者に散々バカにされた商品ですが、その後全国の樽屋が竹十に製造工程の見学に来て、今では各地で定番になりましたが、そろそろ役目を果たしつつある感がないとは言えません。





酒樽屋が作る木製樽(タル)

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明日から師走です。

��1月は本業の酒樽(タル)に加えて、宮樽太鼓や漬物樽、味噌樽の御注文が重なり、
ずいぶん長く「酒樽屋日誌」をUPで来ませんでした。

毎年、気温が下がる頃に樽屋は忙しくなるのです。
丁度この頃に新酒が出ますし、晩秋の宮樽太鼓の催しが盛んになります。
各地の学校では音楽会に樽太鼓を使って下さるし、
結婚式では酒樽による鏡開きも復活して来ました。
漬物作りや味噌作りに木製樽(タル)が最適だと言う事にようやく皆さんが気付きはじめて下さったようです。
更に接着剤を一切使わない「樽屋竹十」の木製樽(タル)を評価して下さるようになり、
御陰様で大忙しでした。

夜遅くまで響く樽作りの音に我慢して下さった近所の皆さん、申し訳ありませんでした。