2008年6月26日

八木節に樽太鼓を使う

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八木節は栃木や群馬における夏の風物詩です。
昔は酒樽や醤油樽の空になったもの「一空樽」(いちあきだる)でリズムをとって唄い踊ったものです。

今は「一空樽」が入手し難くなって来たので、普通の和楽器を使っている地域が多いようですが、やはり伝統的な八木節には樽太鼓だと思われる方が多くなり「たるや竹十の樽太鼓」を使って頂いております。

一空樽は和樽が乾燥していて、良い音が出ないので八木節には新しい樽太鼓を使った方が高音が出ます。
八木節に使う和樽は小学生には一斗樽、大人用には四斗樽が一般に使われております。

一空樽に水をかけますと一時的に良い音に戻りますが収縮率の非常に多い杉は、その後急速に乾燥して使いものにならなくなります。

たるや竹十では修理も承っておりますので、早めの修理をおすすめします。

酒樽屋のお八つ 其の拾貳

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酒樽屋もたまには他所で「お八つ」を食します。

初夏の「わらび餅」。
京都にて。






2008年6月25日

漬物樽を味噌樽として使う

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写真は漬物樽ですが、味噌樽として使う事も出来ます。

味噌樽は本来、容量に対して空気に触れる部分を最小にするために、もっと細長い形状をしている物です。
あくまで代替品として使うので、本物には負けます。ただ、プラスチックや琺瑯、陶器の味噌樽に比べるとずっと美味しい物が出来るでしょう。

漬物樽は蓋(ふた)がないので、作るのが簡単に思われるでしょうが、蓋がないという事は一番上の箍(たが)を支える事が出来ないので、その力加減に苦慮します。
酒樽は蓋から酒が漏れないように作らねばなりませんが、箍(たが)を強く締め過ぎても蓋(ふた)が支えてくれるので木樽が壊れる事はありません。
また、長い期間の貯蔵に耐えるため酒樽よりも強度の高い材料を使用しなければならないのです。

味噌樽以外にも醤油を醸造したり、貯水槽として使ったり、一番利用範囲の多い木樽です。

2008年6月24日

酒樽と言えば鏡開き!!!

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酒樽の蓋を外した図です。

鏡開きの時は、失敗を避ける為に、あらかじめ蓋を外しておく場合が多いのですが、
この酒樽の場合も相当苦労して、蓋をこじ開けた様子が酒樽本体の傷から推察されます。

「鏡開き」が容易に出来る酒樽という注文が年に何回かあります。
「鏡開き」し易いという事は即ち輸送中に清酒が漏れ易いという事なので、それは無理な注文なのです。

最初から蓋のない酒樽を作って、宴会の現場で一升瓶から酒樽に清酒を注ぎ、上に蓋を置けば安易なのですが、それでは酒樽の中で清酒が吉野杉の木香に包まれる魔法の数日間を得られません。

「金べら」と木槌があれば、酒樽の蓋は容易に開くのです。
詳細は次回に...................

2008年6月16日

僧兵まつり 燃える酒樽

31_0.jpg 朝日新聞夕刊より

炎に包まれる酒樽神輿。僧兵太鼓が響く中、松明約100本を立てて酒樽神輿を大勢の僧兵姿の男衆が担ぎます。
樽屋としては、酒樽(さかだる)が燃えないかどうかの方が心配です。
新聞の写真は四斗の酒樽です。

毎年、10月に三重県の御在所岳で催されます。

2008年6月10日

ドイツの樽屋その2

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ファスビンダーの命日です。
ライナー ヴェルナー ファスビンダー1982年6月10日、37歳で急死しました。
FASSBINDERとは南ドイツやオーストリアで「樽屋」という意味なので親近感を覚えます。

写真は、そのファスビンダーの妻でもあった女優イングリット カーフェン。
彼女は優れた歌手でもあり、現在はパリに在住。
来年は主演オペラがベルリンで上演予定。

現在の夫であるJean-Jacques Schuhlが、ずばり[INGRID CAVEN]という小説を上梓。
��000年のゴンクールを受賞。
原書はフランス語ですが、ドイツ語や英語が頻繁に出て来てきます。(時々イタリア語も)
いきなりエピグラフに[Ich weiss nicht was soll es bedeuten]というChristian Johann Heinrich Heineの「ローレライ」の一節と
Heinrich von Kleistの「優雅は人形あるいは神にもっとも純粋なかたちであらわれる」が出てきて面喰らいます。
もっとも、樽屋は原書では読めません。
訳本は新潮社から出ています。

 FASSBINDERの映画はアテネフランセの映画祭ドイツ文化センターで上映予定です。

2008年6月9日

酒樽屋のお八つ 其の拾壱

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水無月(みなづき)です。
京都では6月30日は夏越(なごし)の祓に、三角の水無月を食します。

せっかちな樽屋(たるや)はちょっと早めに頂きました。
氷室で貯えた氷を模して三角形をしています。





和樽に添える入山札(いりやまふだ)

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和樽を贈答用などに使用する場合に、贈る方の名などを書いて和樽に付ける木札です。
「祝」や「勝利」等の文字の下に自分の名を入れて、他の和樽と区別する訳です。

板の上の屋根状の部分が「入」という形に組まれています。
「まねき」とも呼びます。

本来、板に直接墨書きしたものですが、最近は熨斗紙に書いた物を巻き付けて何度も使う方が多いようです。
板に直接書く場合は艶出しのため墨に清酒を混ぜます。

歌舞伎の顔見世興行に役者の名を記した物が由来なので、客が大入りになるように木札いっぱいに名前を入れます。
二枚目、三枚目の語源はここからきているそうです。(一枚目は座主に名前)

歌舞伎の場合は桧で出来た物が殆どですけれど、清酒の時は香りが強いので、出来れば和樽同様に杉製を使いたいものです。



2008年6月8日

樽太鼓の修理(八木節の場合)

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樽太鼓は八木節に使う位ですから、たいそう激しく叩くので、使用しない時の保管状態が悪いと写真のように痛んでしまいます。
殆ど、ばらばらになる寸前に「たるや竹十」の工房に修理に持ち込まれました。

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新しい蓋を込めて、「箍」(たが)を総替えし、更に側面を削れば新品同様に変身します。
どんな物でもそうですが、余り痛まないうちに、なるべく早く修理をする方がきれいに仕上がります。
釘や木工用ボンドなどで補修しても、音が良くなる訳でもなく、木製和樽の修理を困難にするだけですから、箍(たが)が緩んできたら、すぐに修理に出して下さい。

今月は季節柄、八木節の樽太鼓の注文が重なっています。
かつて八木節には和樽を用いていたそうです。

2008年6月3日

和樽

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樽(たる)は大きく分けて、和樽と洋樽の二種類があります。
和樽の材料は殆どが杉、洋樽の材料は主には樫を使います。

「たるや竹十」で作っているのは、今も昔も「和樽」です。
材料は吉野杉。その中でも最高の川上村の杉を使っています。

写真は和樽の中でも代表的な四斗甲付樽(こうつきだる)。